【シリーズ】GAFAが選ぶ投資とは?(2)Google

Google(Alphabetグループ)の投資会社や投資先の企業について解説します。GoogleはGV、CapitalG、Gradientの3つの投資会社を通して、テクノロジースタートアップへの投資を行なっています。本記事では、それぞれの投資会社の特徴と注目の投資先企業をいくつかご紹介します。

Googleの投資

Googleの親会社であるAlphabetのグループ会社には、GVCapitalGGradient Venturesの3つの投資会社があり、主にこの3社を通してテクノロジー企業への投資を行っています。

Google logo on building in Googleplex
Image: Adobe Stock / Sundry Photography

GV

GVは、2009年にGoogle Venturesとして設立された、Alphabet社のベンチャーキャピタルです。2021年現在、継続的に投資関係にある企業は300社あり、ファンド全体で50億ドル(約5,500億円)を管理しています。投資先企業のうち48社がIPOを果たし、160社以上がM&Aされました。

投資領域はインターネット、ソフトウェア、ハードウェア、ライフサイエンス、ヘルスケア、人工知能、モビリティ、サイバーセキュリティ、農業まで幅広く、さまざまなスタートアップ企業への投資を行なっています。

投資対象となるスタートアップ企業の規模も幅広く、初期のシード投資からより成熟したレイトステージの投資まで行なわれています。また、投資先企業の国籍は、北米や欧州がメインです。

CapitalG

CapitalGは、2013年に設立された、Alphabet社のプライベートエクイティファンドです。2021年現在、30億ドル(約3,300億円)を管理下に置き、45社に投資を行なっています。投資先企業のうち、10社がIPO、9社がM&Aを行ないました。

GV同様に領域は幅広く、ビッグデータ、フィンテック、セキュリティ、eラーニングなどの分野で投資を行なっています。投資対象となるのは、ある程度成長した大規模なテクノロジー・スタートアップの企業に絞られています。

投資先企業に対しては、CapitalGのマーケティング、ビジネス開発、データサイエンスへのアクセスを提供して企業の成長をサポートしています。投資先企業の国籍には、北米や欧州に加えて、中国やインドも含まれています。

Gradient Ventures

Gradient Venturesは、2017年に設立された、Googleのベンチャーキャピタルです。2021年現在、67社以上の企業に投資を行なっています。

Gradient Venturesの投資対象は、プレシード、シード、シリーズAのアーリーステージのAIスタートアップに特化しています。投資先企業の具体的な事業領域としては、AIおよび機械学習の開発ツール、フィンテック、ヘルスケア、物流・トラベル、セールス・マーケティングなどがあり、AIに関連した幅広い企業への投資を行なっています。

投資先企業に対しては、AI開発におけるGoogleのリソース提供やAIの専門家の紹介などをしています。

Googleが投資するスタートアップ

本記事では、Googleが投資するスタートアップ企業をいくつかご紹介します。

NymHealth

Image: GV / NymHealth

NymHealthは、ヘルスケア領域の業務自動化ソフトウェアを提供する企業です。スタートアップ創業者を数多く輩出している、イスラエル軍の8200部隊出身の2人の創業者によって2018年に設立されました。

米国の医療現場では、医療費の支払いのために保険会社に対して請求書類を提出する必要があります。この書類の作成は、医療従事者の書いたメモを元に、病気や治療法に対応するコードを記載するという手間のかかる作業です。NymHealthは、医学的知見と自然言語処理の技術を活用することで、この請求コード作成の自動化を実現しました。

NymHealthは、2020年にGVが主導したシリーズAラウンドで、1,650万ドル(約18.3億円)の資金調達を行ないました。

Spotify Greenroom 

Image: Spotify Greenroom / official website

Greenroomは、スポーツや音楽について話すためのソーシャルオーディオアプリです。他のオーディオアプリよりも、専門的でソーシャルな点が特徴的です。

Greenroomでは、スポーツ愛好家、アスリートやスポーツ・音楽業界関係者が集まり、チームやアスリート・ミュージシャンにとって重要なトピックについて話し合っています。ファンは、スポーツや音楽のニュースを中心としたライブチャットルームに立ち寄って話を聞いたり、関心のあるテーマについてコミュニティを構築したりできます。

Greenroomの以前の名称はLocker Roomといい、2020年にGVが主導するシードラウンドで930万ドル(約10.3億円)の資金調達を行ないました。2021年にLocker Roomを提供するBetty Labs社は、音楽配信サービスプロバイダーのSpotifyに買収され、このアプリの名称もGreenroomに変更されています。

Next Insurance

Image: Next Insurance / official website

Next Insuranceは、中小企業や個人事業主向けに、よりシンプルで手頃な価格のデジタル保険を提供しています。AIと機械学習を活用することで保険購入プロセスを簡素化し、従来の保険と比較して最大30%のコスト削減を実現しています。

中小企業のオーナーや個人事業者は、Next INsuranceのサービスを利用することで、10分以内に見積もりを得た上で保険を購入することができます。Next Insuranceが提供するビジネス保険には、一般的賠償責任保険、労災補償、商業用不動産保険、商業用自動車保険など7種類があります。また、会計士、育児、ゼネコンなど多様な職種に対応しています。

Next Insuranceは、CapitalGから2020年に最初の投資を受けました。

Algorithmia

Image: OpsMatters / Algorithmia

Algorithmiaは、機械学習のライフサイクルを管理し、機械学習モデルの大規模な展開を自動化する機械学習基盤(MLOps)を提供しています。

機械学習モデルの実装から運用までのライフサイクルを円滑に進めるためには、機械学習(Machine Learning)の開発と運用(Operations)の一体化が必要です。この一体化を実践することや、その概念自体をMLOpsと呼びます。

Algorithmiaのプラットフォームは、従来よりも7倍の費用対効果、12倍の高速展開などの優位性を持ち、機械学習モデルを迅速かつ大規模に提供することを可能にします。

Algorithmiaは、2019年にGradient Venturesを含む企業から2,500万ドル(約27億円)のシリーズB資金調達を行なっています。

まとめ

本記事では、Googleの投資会社や投資先の企業について解説しました。大手テック企業であるGoogleの投資動向を知ることで、スタートアップ業界や技術トレンドについての理解を深めることができます。

海外進出や海外スタートアップとの協働をお考えの際には、お気軽にお問い合わせください。

 

GAFAが選ぶ投資シリーズ

  1. 【シリーズ】GAFAが選ぶ投資とは(1)全体像の解説
  2. 【シリーズ】GAFAが選ぶ投資とは(2)Google
  3. 【シリーズ】GAFAが選ぶ投資とは(3)Apple
  4. 【シリーズ】GAFAが選ぶ投資とは(4)Facebook
  5. 【シリーズ】GAFAが選ぶ投資とは(5)Amazon

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