【シリーズ】GAFAが選ぶ投資とは(3)Apple

Appleは、世界最大の投資会社の一つであるBraeburn Capitalや、森林保護を目的とするRestore Fundなどの投資機関を持ち、活発な投資活動を行なっている企業です。本記事では、Appleの投資会社、ファンドおよび米国での投資計画と、投資先の企業について具体例と共に解説します。

Appleの投資

Image: Adobe Stock / JHVEPhoto

Appleは、世界時価総額ランキング首位の世界的大企業です(2021年6月末時点)。その時価総額は2兆ドル(約220兆円)を超え、約2,000億ドル(約22兆円)近くの現金を保持しています。

Appleといえば、iPhoneやMacBookをはじめとするデバイスの開発・販売や、iTunesやApp Storeなどのデジタルコンテンツの提供を行なう企業として広く認知されています。しかし、世界最大の投資会社の一つであるBraeburn Capitalを子会社に持つことはあまり知られていません。

また、Appleでは、森林保護プロジェクトを投資対象とするRestore Fundを発足したり、米国における投資を4300億ドル(約46兆円)に引き上げることを発表したりと、社会・経済への貢献的投資活動も積極的に行なっています。

Braeburn Capital

Braeburn Capitalは、2006年に設立されたAppleの子会社であり、Appleの資産管理や投資管理を行なうヘッジファンドです。Braeburnという名前は、リンゴの栽培品種名に由来します。

2012年には、Braeburn Capitalが1,172億ドル(約13兆円)を運用する世界最大のヘッジファンドであると、米国のWebメディアであるCNETが発表しました。2017年時点では、2,689億ドル(約29.7兆円)の運用資産残高(AUM)がありました。これほど大きな金額を運用しているにも関わらず、Braeburn Capitalは専用のWebサイトもなく、開示されている情報が非常に少ない企業です。

Braeburn Capitalを通したAppleの最大の投資カテゴリーは企業証券とされ、Appleの2021年3月時点での連結財務諸表によると314億ドル(約3.5兆円)の企業株を保有しています。

Restore Fund

Restore Fundは、2021年4月にAppleとゴールドマン・サックスおよび、国際環境NGOであるConservation Internationalによって共同設立された投資会社です。森林保護プロジェクトを投資対象とし、2億ドル(約220億円)が投じられました。

Appleは、2030年までにサプライチェーンの100%をカーボンニュートラルにすることを宣言し、さまざまな取り組みを進めています。具体的には、Apple製品の製造に用いられる電力を再生可能エネルギー由来にしたり製品のエネルギー効率を向上させたりすることで、二酸化炭素排出量の削減に取り組んでいます。

Restore Fundでの取り組みもその一環であり、森林を保護・回復させることで大気中の二酸化炭素を回収することを目的としています。Restore Fundでは、8億900万ヘクタールのサバンナや、38,000ヘクタールの森林、11,000ヘクタールのマングローブ林などの保護・回復に努めています。

米国での投資

Appleは、2021年4月に米国において5年間で4300億ドル(約47兆円)を投資し、20,000人の雇用を創出すると発表しました。シリコンエンジニアリングや5Gテクノロジー、人工知能などの革新的な分野への雇用創出投資に資金を提供するとしています。

この投資には、米国のサプライヤーへの直接支出、データセンターへの投資、米国での設備投資、および20州におけるApple TV +のコンテンツ制作などが含まれ、それにより数千の雇用を創出して、クリエイティブ産業をサポートします。

また、ノースカロライナでは、10億ドル(約1,100億円)以上を投資して新しいキャンパスとエンジニアリングハブを建設する予定です。この投資により、機械学習、人工知能、ソフトウェアエンジニアリング、およびその他の最先端の分野で3,000人以上の雇用を生み出します。

Appleが投資・買収した企業

本記事では、Appleが投資・買収した企業をいくつかご紹介します。Appleの投資・買収は、スタートアップのような若い企業よりも自社のサプライチェーン上で必要な技術を持っている企業が中心となっています。

Imagination Technologies

Image: Imagination Technologies / official website

Imagination Technologiesは、1985年に設立された英国の半導体およびソフトウェア設計会社です。PowerVRモバイルグラフィックプロセッサ(GPU)、ニューラルネットワークアクセラレータ、およびネットワーキングルーターの設計を行なっています。

Imagination Technologiesの製品は、家電や自動車、モバイル端末やPCなど、あらゆる電化製品に使われ、スマートフォンやタブレットでは高品質なグラフィックを、Wi-FiやBluetooth端末では快適な接続性を実現しています。

Imagination Technologiesは、2008年により高性能なGPUの開発のためにAppleとライセンス契約を締結しました。Appleは、2008年に3.6%の株式を購入し、2009年には保有株式を9.5%に引き上げました。

DiDi Chuxing

Image: AllVectorLogo / DiDi Logo

 DiDi Chuxingは、2012年に設立されたモビリティサービスを提供する中国の企業です。5.5億人以上のユーザーと数千万人のドライバーが利用しており、世界で最大のシェアを持つライドシェア企業の一つです。ライドシェア事業の他に、タクシー・自家用車の手配、シェア自転車、配送サービスや自動車の販売およびメンテナンスなどの事業を行なっています。

2015年7月には、20億ドル(約2200億円)の資金調達を行ない、民間企業の単一の資金調達ラウンドとして最高額を記録しました。さらに2016年には、Appleやアリババグループ子会社のアント・フィナンシャルなどから45億ドル(約4,950億円)の資金調達を行ないました。

Anobit Technologies

Image: Crunchbase / Anobit Technologies

Anobit Technologiesは、2006年に設立されたイスラエルのフラッシュメモリコントローラの設計・開発を行なう企業です。フラッシュメモリとは、家電や腕時計からスマホやPCまで身の回りの多くの電化製品に用いられている情報記録装置です。Anobitには、フラッシュメモリに用いられるメモリ信号処理技術などを含む多数の特許技術があります。

Appleは2011年に3.9億ドル(約430億円)でAnobitを買収しました。Anobitのフラッシュメモリ・コントローラは多くのApple製品に用いられ重要な役割を果たしています。また、AppleはAnobitの買収によって、多くの非常に優秀なコンピュータ・チップのエンジニアを獲得することを狙っていたと推察されています。

まとめ

本記事では、Appleの投資会社や投資先の企業について解説しました。大手テック企業であるAppleの投資動向を知ることで、スタートアップ業界や技術トレンドについての理解を深めることができます。

海外進出や海外スタートアップとの協働をお考えの際には、お気軽にお問い合わせください。

 

GAFAが選ぶ投資シリーズ

  1. 【シリーズ】GAFAが選ぶ投資とは(1)全体像の解説
  2. 【シリーズ】GAFAが選ぶ投資とは(2)Google
  3. 【シリーズ】GAFAが選ぶ投資とは(3)Apple
  4. 【シリーズ】GAFAが選ぶ投資とは(4)Facebook
  5. 【シリーズ】GAFAが選ぶ投資とは(5)Amazon

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