Google、Apple、Facebook、Amazonはそれぞれ異なる投資戦略でスタートアップ投資や買収を行なっています。投資・買収先企業を確認することで、各社の戦略や方向性への理解が深まります。本記事では、4社の特徴を踏まえた具体的な投資事例もまじえながら、GAFAによる投資の全体像について解説します。
目次
GAFAとは
GAFAは、Google、Apple、Facebook、Amazonの米国IT大手4社の頭文字をとった言葉です。ここにMicrosoftを加えてGAFAMと呼ばれることもあります。また、他のテクノロジー系の勢いのある企業と併せて「Big Tech」や「Tech Giants」と呼ぶことも多いです。
Googleの投資・買収
Googleの親会社であるAlphabetのグループ会社には、GV、capitalG、Gradient Venturesの三つの投資会社があり、主にこの三社を通してテクノロジー企業への投資を行っています。
GVは、投資領域や企業規模によらず幅広く投資を行なっています。投資先企業の国籍は、北米や欧州がメインです。
capitalGは、GV同様に領域にはこだわらない投資を行なっていますが、対象となるスタートアップはある程度成長したLater Stageの企業に絞られています。投資先企業の国籍は、北米や欧州に加えて、中国やインドも含まれています。
Gradient Venturesは、AIに特化した投資を行なっています。対象となるスタートアップは、capitalGとは対照的に、まだ初期段階にあるEarly Stageの企業に絞られています。投資先企業の国籍は、北米が中心です。
Googleが投資・買収した企業例:ELSA
ELSAは、英語学習者のためのモバイルアプリを提供している企業です。人工知能と音声認識技術を活用することで、英語学習における発音の向上をサポートします。1,200以上のレッスンがあり、1,300万人が利用しています。ELSAはその技術力も高く評価されており、人工知能を活用したアプリのトップ5にランクインしています。
ELSAは2019年にGradient Venturesも参加したシリーズAの投資ラウンドで、700万ドル(約7.7億円)の資金調達をしました。
Appleの投資・買収
Appleでは、資産管理や投資管理のための子会社であるBraeburn Capitalを通して企業投資が行われています。しかし、Braeburn Capitalにはホームページやポートフォリオの公開などがなく、他の大手テック企業と比較して投資に関する情報があまり明かされていません。
その中で、明らかになっているAppleの企業投資の特徴としては、自社のサプライチェーン上で必要な企業への投資・買収があります。例えば、iPhoneやMacBookなどのApple製品の液晶に用いられるガラスの加工技術や、メモリに用いられているフラッシュメモリ・コントローラの技術などを有する企業が投資や買収の対象になっています。
また、Appleは、社会的に価値のある投資も積極的に行っています。気候変動対策としての森林保護プロジェクトへの投資や、米国経済に貢献するための5Gや人工知能などの先端技術への投資および雇用の創出などがその例です。
Appleが投資・買収した企業例:Anobit
Anobit Technologiesは、2006年に設立されたイスラエルのフラッシュメモリコントローラの設計・開発を行なう企業です。
Appleは2011年に3.9億ドル(約430億円)でAnobit Technologiesを買収しました。同社のフラッシュメモリ・コントローラは多くのApple製品に用いられ重要な役割を果たしています。
Facebookの投資・買収
Facebookは世界最大のSNSを提供する企業として有名ですが、その企業形態は業種の異なる企業の合併・買収によって成長したコングロマリット(複合企業)です。2012年にはInstagram、2014年にはWhatsAppの買収が話題になりました。
一方で、2020年には米連邦取引委員会(FTC)および全米各地の州政府から、反トラスト法(独占禁止法)に基づき提訴されました。2021年6月に提訴は棄却されましたが、Facebookによる市場の独占やユーザーのプライバシー保護などに対しては依然として批判意見があり、8月には米連邦取引委員会が再提訴しています。
Facebookは、2020年にスタートアップ投資を行なうためのベンチャー部門を設立しました。スタートアップコミュニティとの関係性構築を継続することが目的であると考えられています。運用金額は数百万ドル(数億円)と発表されていますが、具体的な金額や投資責任者などは公表されていません。
Facebookが投資・買収した企業例:Meesho
Meeshoは、2015年に設立されたインドのスタートアップで、ソーシャルコマースアプリ「meesho」を提供しています。meeshoは販売者と消費者をつなぐオンラインマーケットプレースで、Facebook、WhatsApp、InstagramなどのSNSを介して売買が行われる仕組みです。
Facebookが2019年にMeeshoに投資を行ない、MeeshoはFacebookが初めて投資したインド企業となりました。
Amazonの投資・買収
Amazonでは、自社内部の投資部門に加えて、目的に応じたいくつかの投資ファンドも設立し積極的な投資を行なっています。
2015年に設立されたAmazon Alexa Fundでは、音声技術革新の促進を目的として最大2億ドル(約220億円)を運用しています。
気候変動対策への投資を目的として20億ドル(約2200億円)の資金を運用するThe Climate Pledge Fundは、2020年に設立されました。
また、2021年に設立されたAmazon Smbhav Venture Fundでは、インドの中小企業のデジタル化を目的として2.5億ドル(約275億円)の資金が運用されます。
これらの投資ファンドに加えて、Amazonの創業者であるジェフ・ベゾス氏は、Bezos Expeditionsという個人投資会社を通した投資も積極的に行なっています。
Amazonが投資・買収した企業例:Heyday
Heydayは、2020年に設立されたアメリカのスタートアップです。Amazonをはじめとするマーケットプレイスで事業を行なう業者の買収や育成、立ち上げを手がけています。
Heydayは、2020年にAmazonも参加するシリーズAの投資ラウンドにおいて、1.75億ドル(約192億円)の資金調達をしています。
まとめ
本記事では、大手テック企業であるGoogle、Apple、Facebook、Amazonの投資・買収について紹介しました。
海外スタートアップの事業領域の流行を知り、今後の方向性を予測する上で、大手テック企業の投資情報は重要な判断材料になります。
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