Facebookは、業種の異なる企業の合併・買収によって成長したコングロマリット(複合企業)です。InstagramやWhatsAppなど大型の買収も話題になりました。2020年には反トラスト法で提訴(棄却)され批判を受ける側面もありますが、投資部門を設立するなど積極的なスタートアップ投資を継続しています。現在は、メタバースを注力領域とし、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)の技術を持ったスタートアップを数多く買収しています。
本記事では、Facebookによる投資・買収について、具体的なスタートアップの紹介をまじえながら解説します。
目次
Facebookによる投資・買収
Facebookは世界最大のSNSを提供する企業として有名ですが、その企業形態は業種の異なる企業の合併・買収によって成長したコングロマリット(複合企業)です。
2012年には当時まだ13人しか社員のいなかったInstagramを約10億ドル(約1,100億円)で買収して話題になりました。また、2014年には、当時すでに4.5億人以上のユーザーがいたメッセンジャーアプリであるWhatsAppを約190億ドル(約2.1兆円)で買収しました。
Facebookによる買収に対する批判
Facebookは2020年に米連邦取引委員会(FTC)および全米各地の州政府から、反トラスト法(独占禁止法)に基づき提訴されました。この提訴では、InstagramやWhatsAppのような新興の競合企業を買収することで、公正な市場競争を阻害し、ユーザーの選択肢を狭めている点が問題視されました。
この裁判は、2021年6月にコロンビア特別区連邦地裁によって提訴が棄却されましたが、8月にはFTCがFacebookを再提訴しています。
投資部門の設立
Facebookは、2020年にスタートアップ投資を行なうためのベンチャー部門を設立しました。設立当時は、反トラスト法で提訴される前段階の調査を受けていた頃であり、提訴によって大規模な買収が禁止された場合に備え、より小規模なスタートアップへの投資を強化する意図があったと考えられています。
それまでにもFacebookは、アクセラレータプログラムやハッカソンを通してスタートアップコミュニティとの関係性構築に努めていましたが、投資部門の設立もその延長線上にあるとされています。
この部門での運用金額は数百万ドル(数億円)と発表されていますが、具体的な金額や投資責任者などは公開されていません。
Facebookが投資・買収したスタートアップ
本記事では、Facebookが投資・買収したスタートアップ企業をいくつかご紹介します。
Scape Technologies
Scape Technologiesは、2016年に設立されたイギリスのスタートアップです。カメラを通したコンピュータビジョンを活用し、GPS以上の位置情報精度を持つ技術の開発に取り組んでいました。当初はAR(拡張現実)への応用を主軸としていましたが、ロジスティクスやモビリティ、ロボティクスの精度向上など多様な領域への技術応用が可能です。
正確な買収額は非公開ですが、2020年にFacebookは4,000万ドル(約44億円)程度でScape Technologiesを買収したとされています。Facebookは、VRやARのプラットフォームへの投資に力を入れているため、Scape Technologiesの買収もその一環であると考えられています。
Unit 2 Games
Unit 2 Gamesは、2017年に設立されたイギリスのスタートアップです。Unit 2 Gamesは、ゲーム作成プラットフォーム「Crayta」を提供し、コンテンツのプレイに留まらず、ゲーム開発から実況、視聴までを含めたコミュニティの活性化に取り組んでいます。
誰もがより簡単にゲーム開発できることを目的として作られたCraytaは、クラウド上でゲーム開発を行なえるプラットフォームであり、複数人で開発を行なうことが可能です。また、ゲームクリエイターの収益化支援なども行なっています。
Unit 2 Gamesは、2021年にFacebookに買収され、ゲームプラットフォームを提供するFacebook Gamingに加わりました。買収金額は非公開となっています。
Meesho
Meeshoは、2015年に設立されたインドのスタートアップです。ソーシャルコマースアプリ「meesho」を提供しています。
ソーシャルコマースとは、ソーシャルネットワーク(SNS)上で完結するEコマースのことを指します。meeshoは、Facebook、WhatsApp、InstagramなどのSNSを介して販売者と購入者をつなぐオンラインマーケットプレースです。女性を中心とした1,300万人以上の起業家や10万社以上の業者がmeeshoを利用し、主にアパレル、家電製品、電子機器を扱っています。
Facebookは2019年にMeeshoに投資を行ない、MeeshoはFacebookが初めて投資したインド企業となりました。
Redkix
Redkixは、2014年に設立されたイスラエルのスタートアップです。EメールとSlackのようなチャットツールを掛け合わせたコミュニケーションサービスを提供していました。
Redkixは既存のEメールアカウントを元に動作する設計のため、連絡する相手がRedkixを使用していなくてもEメールのアドレスさえ知っていれば連絡できる点で評価されていました。
Facebookは、2018年にRedkixを買収しました。買収金額は明らかになっていません。Facebookはビジネス向けコミュケーションツールのWorkplaceを運用していましたが、競合サービスであるSlackに対抗するため、Workplace内に独自の伝達機能を構築する目的で、Redkixを買収したと考えられています。
まとめ
本記事では、Facebookの投資部門や投資・買収先企業についてご紹介しました。大手テック企業の中でも特に買収戦略に力を入れているFacebookの投資動向を知ることで、スタートアップ業界や技術トレンドについての理解を深めることができます。
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