Amazonでは、自社の投資部門に加えて、音声技術にフォーカスしたAlexa Fundや気候変動対策を目的としたThe Climate Pledge Fund、インドの中小企業をデジタル化するAmazon Smbhav Venture Fundなど、複数の投資子会社を通してスタートアップへの投資を行なっています。
本記事では、Amazonグループのファンドと投資先のスタートアップについて具体例をまじえながら解説します。
目次
Amazonによる投資
Amazonは、Eコマース、クラウドコンピューティング、ストリーミング、人工知能などの事業を行う大手テクノロジー企業です。
同社では、主に自社内部の投資部門からスタートアップへの投資を行なっています。また、いくつかの投資ファンドも設立しています。2015年には、音声技術を中心としたスタートアップ投資を行なうAlexa Fundを設立しました。
また、2020年には、気候変動対策としてクリーンエネルギーに投資するThe Climate Pledge Fundを、2021年にはインドのスタートアップ投資を行なうAmazon Smbhav Venture Fundを設立しました。
これらの投資ファンドに加えて、Amazonの創業者であるジェフ・ベゾス氏は、Bezos Expeditionsという個人投資会社を通した投資も積極的に行なっています。
Alexa Fund
Alexa Fundは2015年に設立されたベンチャーキャピタルで、最大2億ドル(約220億円)を運用しています。
音声認識アシスタントのAlexaに代表される音声技術開発に力を入れており、Alexa Fundでは音声技術の促進を目的とした投資を行なっています。投資対象となるのは、Amazonが提供するAlexa Skills KitやAlexa Voice Serviceなどを使用して、Alexaの新機能作成を行なうプロジェクトです。
企業の規模や種類には制限がなく、さまざまな種類の革新的な企業に投資しています。投資を受ける企業は、資金的な援助の他に専門知識へのアクセスやハードウェア、ソフトウェアの開発などさまざまな支援を受けることができます。
The Climate Pledge Fund
The Climate Pledge Fundは、2020年に設立されたAmazonのコーポレート・ベンチャーキャピタルです。気候変動対策への投資を目的とし、20億ドル(約2200億円)の資金を運用しています。運用期間は公表されていません。
The Climate Pledge(気候変動対策に関する誓約)とは、2019年にAmazonが環境改善に取り組む慈善団体Global Optimismと共同で宣言した自主誓約です。この誓約では、パリ協定の目標達成より10年早い2040年までに、二酸化炭素排出量をゼロにすることを目標としています。
このファンドを通して、運輸、エネルギー、バッテリー、製造、食品、農業などさまざまな業界の企業に投資が行なわれる予定です。
Amazon Smbhav Venture Fund
Amazon Smbhav Venture Fundは、2021年に設立されたインドの中小企業のデジタル化を目的としたベンチャーキャピタルです。インドのスタートアップや起業家に投資するために、2.5億ドル(約275億円)の資金が運用されます。運用期間は公表されていません。
ファンド設立まで、Amazonは自社のインド事業に65億ドル(約7157億円)を投資してきたものの、不公平で非倫理的な取引を行っているとインドの政府当局や中小企業から批判を受けていました。
Smbhav Ventureでは、中小企業のオンライン化、オンライン販売、業務のデジタル化やグローバル市場へのアクセスなどを支援するようなスタートアップに投資し、中小企業の支援をすることに意欲的であると述べています。
Bezos Expeditions
Bezos Expeditionsは、Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏の個人投資会社であり、2005年に設立されました。2020年時点での運用金額は1078億ドル(約12兆円)です。
投資対象は、アーリーステージ、レイトステージのスタートアップで、幅広い業界や領域に投資を行なっています。これまでに投資してきた注目企業としては、Twitter、Airbnb、Stack Overflow、General Assemblyなどがあります。
また、Bezos Expeditionsを通していないジェフ・ベゾス氏個人の投資として、初期のGoogleにも投資を行なっています。
Amazonが投資したスタートアップ
本記事では、Amazonの投資部門からの投資に加えて、Amazonが設立した投資ファンドおよびジェフ・ベゾス氏の個人投資までを含め、Amazonグループが投資したスタートアップ企業をご紹介します。
Heyday
Heydayは、2020年に設立されたアメリカのスタートアップです。Amazonをはじめとするマーケットプレイスで事業を行なう業者の買収や育成、立ち上げを手がけています。
マーケットプレイスで商品を販売する独立小売業者(サードパーティセラー)はAmazon全体の売上高の60%を占めていますが、規模の小さい小売業者がほとんどです。
そのため、Heydayのような企業がそれらの小売業者を買収し、統合したりリソースを提供したりすることで売り上げを伸ばそうとしています。
Heydayは、2020年にAmazonも参加するシリーズAの投資ラウンドにおいて、1.75億ドル(約192億円)の資金調達をしています。
Endel
Endelは、2018年に設立されたドイツのスタートアップです。集中やリラックス、睡眠など、状況に応じて「音環境」を作り出すテクノロジー「Endel Pacific」を開発・提供しています。
Endel Pacificでは、スマートウォッチなどのデバイスとセンサーから入力を受け、そのデータに基づいてユーザーの状況に応じた最適なサウンドをリアルタイムに作成していきます。
Endelは2020年のシリーズA投資で500万ドル(約5.5億円)を調達しており、Amazon Alexa Fundがこの投資に参加しています。
BETA Technologies
BETA Technologiesは、2017年に設立されたアメリカのスタートアップです。電気垂直離着陸機(eVTOL)および関連する充電ネットワークを開発・提供しています。
同社が手がけるeVTOLのベータ版であるAliaは、最大3つの貨物パレットもしくは6人を運ぶことが可能であり、運用において生じる二酸化炭素排出量はゼロです。
AmazonはThe Climate Pledge Fundを通して、2021年にBETA Technologiesに投資しています。この投資ラウンドでBETA Technologiesは3.68億ドル(約400億円)を調達しています。
M1Xchange
M1Xchangeは、2017年に設立されたインドのスタートアップです。
インド準備銀行が発行する売掛金割引システム(Trade Receivables Discounting System)のライセンスを保有し、零細・中小規模の業者向けにオンライン請求書の割引サービスを提供しています。
零細・中小業者は銀行や金融業者にアクセスして、他よりも低い年間6〜10%のレートで融資を受けることができます。
Amazonは、2021年にAmazon Smbhav Venture Fundを通して1000万ドル(約11億円)の投資ラウンドを実施しました。
まとめ
本記事では、Amazonグループの投資部門やファンドおよび、投資先企業についてご紹介しました。
多様なファンドを設立し積極的に投資を行なっているAmazonの投資の様子を知ることは、海外のテック業界の方向性を理解する上でも効果的です。
海外進出や海外スタートアップとの協働をお考えの際には、お気軽にお問い合わせください。