フランスの環境問題と対策の概要を紹介します(2)プラスチックゴミ

プラスチックゴミは、海洋汚染を引き起こす原因として世界中で問題視されています。フランスでは、2010年代から積極的に法律を制定・施行し、不要なプラスチック製品の削減に取り組んでいます。レジ袋から、ストロー、ペットボトルまで、多くのプラスチック製品が廃止の対象となっています。

フランスの環境問題

フランスの人口は約6500万人で、EU内ではドイツに次いで2番目に多くの人が住んでいます。その大部分は都市部に集中するため、大気汚染のような都市型課題も存在します。

連載となる本記事では、フランスの特徴的な環境問題や対策について一つずつ解説します。2回目となる今回は、プラスチック問題を取り上げ、フランスでの状況や対策を紹介します。

前回記事:フランスの環境問題(1)大気汚染

プラスチック問題

Image: Adobe Stock / vencav

プラスチック問題には、プラスチックゴミが燃焼されるときに生じる温室効果ガスの問題や、プラスチックの原料となる石油資源の枯渇問題、そして、大量のプラスチックによる河川や海洋の汚染問題などがあります。いずれも深刻ですが、近年は特に海洋汚染問題に注目が集まっています。

現代では、1950年代と比較して200倍ものプラスチックが生産されており、特にペットボトルなどの飲み物・食べ物の容器、輸送時に利用される発泡スチロール、包装用のプラスチックの消費が増えています。

その結果として、世界の海には毎年約800万トンのプラスチックゴミが流出し、2050年には海洋のプラスチックゴミが魚の数を超えてしまうという予想もあります。

魚や海鳥、ウミガメなどは、海の中で砕けて小さくなったプラスチック(マイクロプラスチック)を誤食し、それが生態系の破壊を引き起こします。また、マイクロプラスチックを取り込んだ魚介類を食べると、人体にも悪影響が及びます。

海洋汚染は地球規模の深刻な問題であり、持続可能な開発目標(SDGs)の目標14「海の豊かさを守ろう」でも解決が求められています。

フランスでの対策

フランスでは、プラスチックの削減に向けてEUでも特に積極的な取り組みを行なっています。

2020年2月には、サーキュラーエコノミー(循環型経済)へと社会モデルを転換することを目的とした法律が成立しました。この法律では、2030年までに住民1人あたりの家庭ごみを15%、経済活動の廃棄物を5%削減し、2025年までにプラスチックを100%リサイクルして、2040年までに使い捨てプラスチック包装を終了するという目標を設定しています。

プラスチック袋の廃止

上述した法律以前から、フランスでは積極的にプラスチック製品の削減に取り組んでいました。最初に話題となったのは、2016年に発効したレジでのビニール袋の提供の禁止です。有料・無料や量に関わらず、50マイクロメートルより薄いビニール袋はすべて廃止となりました。また、2017年からは野菜や果物を入れるプラスチック製の袋も禁止となっています。

フランスでは、毎年50億枚のレジ袋と120億枚の青果用ビニール袋が使用されていたので、この法律によって170億枚のプラスチック袋が削減されました。

これ以降に使用が許可されているのは、プラスチックとデンプンをブレンドして製造される「バイオベースの」袋のみです。これは、ビニール袋より高コストですが、コンポスト(堆肥化)すると水と二酸化炭素に分解できます。

プラスチックストローなどの廃止

2020年には、先に述べた法律の第一段階として、3つの使い捨てプラスチック製品(プレート、カップ、綿棒)の使用が禁止されました。続く2021年には、使い捨てカトラリー(フォークやナイフ)、プラスチック製テイクアウト容器の蓋、紙吹雪、ドリンクスターラー、発泡スチロール容器、プラスチックストローなどのアイテムがすべて禁止されました。

果物と野菜の包装の禁止

2022年1月からは、果物と野菜のプラスチック包装が禁止されました。フランスでは、販売されている果物と野菜の37%がプラスチックで包装されていると推計されます。この法律の施行によって、毎年10億枚以上の不要なプラスチック包装を削減することができると予測されています。

カットフルーツと、一部の傷みやすい果物や野菜は引き続きプラスチックでの包装が許可されていますが、こちらも2026年の6月末までに段階的に廃止される予定です。

水飲み場の設置義務

同じく2022年からは、不要なペットボトル飲料を削減するために、公共の建物には水飲み場の設置が義務付けられています。パリにはすでに1000以上の公共の水飲み場があり、炭酸水が出てくるなどの工夫が施されているところもあります。

おもちゃの禁止と、使い捨て容器の部分的廃止

2022年後半には、ファストフードレストランでは無料のプラスチック製おもちゃの提供ができなくなります。また、2023年からは店内利用における使い捨て容器が禁止される予定です。

まとめ

フランスの環境問題と対策を取り上げたシリーズ第2弾の本記事では、プラスチックゴミについて解説しました。海洋汚染を引き起こす原因として対策が急がれるプラスチック問題ですが、フランスではサーキュラーエコノミーを促進する画期的な法律を成立させ、プラスチック製品の削減に取り組んでいます。

続く記事では、フランスで注力されている食品廃棄物問題について解説します。

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前回記事:フランスの環境問題(1)大気汚染

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