フランスの環境問題と対策の概要を紹介します(3)フードロス

まだ食べられるはずの食料が廃棄されることをフードロス問題と呼びます。多くの都市と同様にこの問題に直面したフランスですが、積極的な規制整備によって問題解決に取り組んでいます。その結果、世界でもっとも持続可能なフードシステムを持つ国の一つとして評価されています。

フランスの環境問題

フランスの人口は約6500万人で、EU内ではドイツに次いで2番目に多くの人が住んでいます。その大部分は都市部に集中するため、大気汚染のような都市型課題も存在します。

連載となる本記事では、フランスの特徴的な環境問題や対策について一つずつ解説します。3回目となる今回は、フードロス問題をピックアップし、フランスでの状況や対策を紹介します。

フランスの環境問題(1)大気汚染

フランスの環境問題(2)プラスチックゴミ

フードロス問題

Image: AdobeStock / George Dolgikh

世界では年間約40億トンの食品が生産されていますが、その3分の1におよぶ約13億トンが、本来は食べることができたにも関わらず廃棄されています。これがフードロス(食品廃棄物)問題です。

2018年時点で世界の人口は 約77億人ですが、そのうち約8.2億人が十分な食事が得られず飢餓に苦しんでいます。もし40億トンの食料が平等に分配されれば、77億人全員が十分な食事を得ることができますが、実際には主に先進国に偏って分配され、多くの食品が廃棄されています。

この問題を解決するために、持続可能な開発目標SDGsにおいても、目標12「つくる責任 つかう責任」のターゲットの一つとして「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。」ことが挙げられています。

フランスでのフードロス

2016年当時のフランスでは毎年1000万トンの食品が廃棄されていました(フランス環境エネルギー管理庁の調査)。

廃棄物の総コストは年間160億ユーロ(約2.1兆円)にのぼり、13%が生産、14%が加工、28%が流通、45%が消費段階で発生しています。重量換算では、32%が生産、21%が加工、14%が流通、33%が消費段階で廃棄されていました。

これらの数字から消費段階で発生するロスが多いことがわかりますが、特にレストランや企業は家庭の4倍もの量を廃棄していました。家庭の年間廃棄量が1人あたり34kgであるのに対し、企業では138kgにのぼっています。

また、食品廃棄物はフランスの総排出量の3%に相当する1530万トンのCO2を排出しており、地球温暖化にも悪影響を及ぼします。

このような状況を変えるため、フランスでは2012年の廃棄物管理施行法の導入以来、さまざまな法律を設定し取り組みを続けてきました。中長期的には、2025年までに、食品廃棄物の量を半減させることを目標としています。

廃棄物管理施行法

2012年に導入されたこの法律では、埋立地に送られる有機廃棄物の量を規制し、毎年120トン以上の廃棄物を出す企業に対しては有機廃棄物のリサイクルを義務付けています。

その後、リサイクルの対象となる廃棄物の量はどんどん下げられ、毎年10トン以上の廃棄物を出す企業もその対象となりました。罰金の額は最高75,000ユーロ(約980万円)です。

大型スーパーへの規制

2016年には、賞味期限間近の食品でも品質に問題ない場合、大型スーパーマーケットは廃棄することができなくなりました。この世界初の法律によって、400平方メートル以上の敷地を持つスーパーマーケットは、チャリティー団体に食品を寄付する契約を結ぶことが義務付けられ、違反した場合は最高75,000ユーロ(約980万円)の罰金の支払い、あるいは2年の禁固刑に処される可能性があります。

フランスのフードバンク

フードバンクとは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品を、食べ物に困っている人や施設に寄付する団体やその活動のことです。

フランスでは、全土で5000を超える慈善団体がフードバンクネットワークに登録しています。主要なフードバンクの一つであるBanques Alimentairesは、36年以上にわたって活動を続けています。フランス全国に79の食料配布所を持ち、年間2億食以上を提供し、6000以上の施設、200万を超える人々の食事をサポートしています。

企業の取り組み

2014年には、フランスの大手スーパーマーケットのIntermarchéが、見た目の基準を満たしていないために流通していなかった野菜を生産者から購入し、3割引で販売する取り組みを行ない話題になりました。

このキャンペーンでは、消費者の共感を得るために「不幸なミカン」「グロテスクなリンゴ」のようにユーモラスな名前をつけました。結果として、店舗の来客数が24%向上するなど集客効果もありました。

また、2018年には、パリのビジネス地区Paris La Défenseの支援を受けてフードロスフォーカスグループが結成されました。このグループのフードロス削減プログラムには5社が参加し、食品廃棄について診断を受けた後、テスト期間にフードロスが削減したかが評価されました。この検証から、フードロス削減に向けて生産プロセスを変更するための実用的なガイドラインが作成されました。

生ごみ専用のゴミ箱の設置

パリでは2017年に、バイオ廃棄物リサイクルの取り組みが実施されました。この取り組みでは、パリ2区と12区の住民に向けて3200個の有機廃棄物(生ゴミ)専用のゴミ箱が設置されました。

毎年3500トンの収集が目標で、集められた食品廃棄物は農業用肥料またはバイオ燃料に変換されます。

食品持続可能性No.1

Economist Intelligence UnitThe Barilla Center for Food & Nutrition Foundation (BCFN) が共同開発したFood Sustainability Index (FSI) (食品持続可能性指数)は、フードシステムの持続可能性において国や地域を評価しランク付けしたものです。

フランスは、フードロス削減を目指した積極的な規制の整備が賞賛され、2017年や2018年に1位を獲得するなど継続的に高い評価を得ています。

まとめ

フランスの環境問題と対策を取り上げたシリーズ第3弾の本記事では、フードロスについて解説しました。先進国の都市の多くが抱えるフードロス問題ですが、フランスでは法律や規制の整備を行い、問題解決に向けて非常に積極的に取り組んでいることがわかりました。

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フランスの環境問題(1)大気汚染

フランスの環境問題(2)プラスチックゴミ

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