【海洋プラスチック問題を解決】海外のスタートアップ7選

海洋プラスチック問題の解決をミッションに掲げたサステナブルなスタートアップが増えています。海洋プラスチック問題とは、海の生態系を破壊するだけでなく、私たちの食の安全や健康をも脅かす、喫緊の環境問題です。

本記事では、多様なアプローチでこの問題に取り組んでいるスタートアップ7社をご紹介します。

1.海洋プラスチック問題とは

海洋プラスチック問題は、プラスチックが海に流れ出ることによって、海洋の生態系に悪影響が及んでいるとして、世界中で対策が急がれている喫緊の環境問題です。

私たちの生活を支えるために製造されるプラスチックの量は、毎年約3億トンを超えると言われています。その内、約1,400万トンは適切に廃棄されずに海に流れ出ているのが現状です。

海に流れ出たプラスチックは、そのまま漂流するものもあれば、波などで砕かれ5mm以下のマイクロプラスチックと呼ばれる破片となり、海洋の漂流物や生物の体内の蓄積物になる場合もあります。

海洋のプラスチック汚染は、私たちの食の安全や健康、沿岸の観光業を脅かすだけでなく、気候変動にも影響を及ぼしているのです。

そこで本記事では、海洋プラスチックゴミの削減にさまざまな方法で取り組む7社をご紹介します。

1.1 Skizo

 Skizo – From the Ocean (skizoshoes.com)

Image: SKIZO / SKIZO

地元の企業などと連携して、回収した海洋プラスチックゴミを、スニーカーなどにアップサイクルしているポルトガルに拠点を置く企業です。使用する海洋廃棄物は、同社や漁師、NGO、地域コミュニティーなどが協力して回収したもの。

さまざまなパートナー会社と連携し、回収されたプラスチックや漁網をSkizo YARN®Arrais YARN®と呼ばれる原材料に加工し、スニーカーなどの製品を製造しています。

Skizoが生み出したのは、スニーカーブランドのみならずプラスチックゴミの回収から製品化までのバリューチェーン。

そのことも評価され、Web Summitにてポルトガルのスタートアップ20社にも選ばれています。

 

本社所在地:ポルトガル、リスボン

創立:2019年

投資額:N/A

出資者:N/A

 

1.2 Relicta

Relicta 

Image: relicta / relicta

漁業廃棄物を原料に、水溶性、生分解性かつ透明無臭という特徴を持つ、バイオプラスチックを開発しているイタリアのスタートアップ。消費者のサステナビリティのイメージを新しいものにしたいという思いで、自宅でも簡単に分解することができる包装用プラスチックを提供しています。

既存のプラスチックと同様の利便性を確保すべく、熱を利用して簡単に加工することを可能にしました。加えて、冷蔵庫などの湿度が高い場所においても品質維持が可能です。

2020年には、EIT Jumpstarterという革新的なビジネスモデルやテクノロジーを競うヨーロッパの大会において、食糧の部門で2位に選ばれました。

 

本社所在地:イタリア、サッサリ

創立:2017年

投資額:N/A

出資者:N/A

 

1.3GravityWave

Gravity Wave (thegravitywave.com)

Image: GRAVITY WAVE / GRAVITY WAVE

海洋プラスチック汚染をなくすことをミッションに掲げ、地中海で回収した海洋プラスチックゴミを活用し、ビジネス展開するスペインの企業です。

100を超える漁師と連携し、回収したプラスチックは累計70,000kg。それを、新たなプラスチック製品にしたり、プラスチック製品の製造の原料として業者に提供したりしています。

同社の収入は主に、「Plastic Footprint」をオフセットするために企業から支払われる代金と、リサイクルプラスチック製品の販売によって得られる収入の2通り。

今後も、より多くの企業や団体とのコラボレーションをし、プロジェクトの規模を拡大する予定です。

 

本社所在地:スペイン、アリカンテ

創立:2020年

投資額:€100K(約1,300万円)

出資者:N/A

 

1.4 CleanHub

cleanhub.com

Image: CleanHub / CleanHub

プラスチックゴミが適切に処理されるように導くソフトウェアの開発や、地域コミュニティーとの連携によって、海洋プラスチックの削減に取り組む企業です。

同社は、海洋プラスチックゴミの約80%を占めるリサイクルできないプラスチックは、燃料として再利用、リサイクルできるものはリサイクル業者に渡すなどして、廃棄物への価値の再付与を実現。加えて、プラスチックゴミの仕分けが進んでいない地域で、適切な処理方法を伝えることで、廃棄されるプラスチックの量の削減にも取り組んでいます。

70もの企業と連携の結果、インドや、ブラジル、タンザニアなどでペットボトル約2,000万本に該当するプラスチックゴミの回収に成功しました。

 

本社所在地:ドイツ、ベルリン

創立:2020年

投資額:€4M(約5億2,600万円)

出資者:Marc Stöckli, Lakestar, Charlie Songhurst, Pirate Capital, Heilemann brothers’ investment vehicle, Friedrich A. Neuman, 468 Capital, Andreas Brenner, Übermorgen Ventures

 

1.5 LOLIWARE

Loliware

Image: LOLIWARE / LOLIWARE

 

海藻由来の環境フレンドリーなストローを開発している企業です。アメリカ国内だけでも、毎日約2,000万本のストローが廃棄されています。

同社の開発した海藻由来のストローは、生分解性や堆肥化に大変優れており、海洋に廃棄されても簡単に分解されることが特徴です。既存のプラスチックストローと同じように使えるように、18時間使い続けることが可能。

同社が生産するストローの需要の増加に伴い、海藻のサプライチェーンやストローの製造方法の効率化に力を入れていく予定です。また、形状の異なるストローの開発もしているとして、投資家から期待を寄せられています。

 

本社所在地:アメリカ、サンフランシスコ

創立:2015年

投資額:$7.9M(約9億1,200万円)

出資者:Geekdom Fund, New York Ventures, Closed Loop Partners, James Freeman, HumanCo, Magic Hour, CityRock Venture Partners, For Good Ventures, Hatzimemos/Libby, NaHCO3, Mark Cuban, Michael F. Price, Jennifer Gilbert

 

1.6 MarinaTex

MarinaTex

Image: Marina Tex / Marina Tex

ビニール袋や包装袋の代替品として使われる、生分解性に優れた生物由来のプラスチックを開発したイギリスのスタートアップ。

毎年、5,000万トンもの魚が廃棄されている現状に注目し、廃棄されてしまう魚介類を原料としたバイオプラスチックを開発しました。生物由来なので、土壌で6週間以内に分解されます。それでいて、従来のビニール袋と同様に頑丈です。

2019年にはJames Dyson Awardという次世代のエンジニアを称え育成するためのアワードで優勝。今後、ビニール袋の削減が進むにつれて増えるであろう需要に応えるために、大量生産やビジネスモデルの構築などに尽力しています。

 

本社所在地:イギリス、ブライトン

創立:2020年

投資額:£30K(約460万円)

出資者:James Dyson Foundation

 

1.7 The Ocean Cleanup

The Ocean Cleanup

Image: The Ocean Cleanup / The Ocean Cleanup

海洋プラスチックゴミの効率的な回収技術を開発し、廃棄物の回収に取り組んでいるNPO団体です。同団体は、海洋を漂流するプラスチックゴミが川からも流れ出ていることから、河川と海の合流地点もターゲットにしています。

同団体が実践している回収技術は、海流によってゴミが集まるホットスポットを解析しターゲットにして、大きな網を2隻の船で引っ張りながらゴミを回収するというもの。回収されたプラスチックゴミは、リサイクル業者に渡されます。

2021年7月から12月は、合計で47日間稼働し、平均して24時間あたり1,000kgのゴミの回収に成功。二酸化炭素の排出量が少ない船を使用したり、カーボンオフセットプログラムに参加していることにも注目です。

 

本社所在地:オーランド、ロッテルダム

創立:2013年

投資額:$35.4M(約40億8,600万円)

出資者:Lynne Benioff, Marc Benioff, Founders Fund

2.まとめ

本記事では、海洋プラスチックゴミの削減に取り組むスタートアップ7社をご紹介しました。

海洋プラスチックの問題は世界が一丸となって取り組まなければいけない喫緊の課題です。プラスチックの再利用のビジネスモデルを構築している企業や、生分解性のバイオプラスチックを開発している企業があったようにアプローチ方法はさまざま。

今後もさらに、市場が拡大することが予想される海洋プラスチックの分野にも注目です。

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