サステナビリティを重視する海外のベンチャーキャピタルを紹介します(中編)

ESG投資をはじめとしたサステナブルビジネスへの投資拡大を受け、気候変動や環境問題に取り組むスタートアップやベンチャーキャピタル(VC)が注目を集めています。第2回となる本記事では、前回に続いてヨーロッパのサステナビリティを専門とするVCをご紹介します。

サステナビリティに特化したVC

近年はESG投資など環境領域への投資拡大によって、持続可能性に配慮したビジネスが経済的にも成功するようになってきました。実際に、世界経済フォーラムによるレポートでは、サステナブルな起業機会には10兆ドル(約1137兆円)のビジネス価値があり、10年間で3.95億人の雇用を生むと推定されています。

このような流れの中で、環境やサステナビリティに特化したVCが増えつつあります。

Quadia

Image: Quadia / Zero Waste Switzerland

Quadiaは、2010年にスイスのジュネーブで設立されたインパクト投資を専門とするVCで、再生型経済への移行を目指す革新的な企業に資金提供しています。

「循環型の生産と消費」「天然資源の利用」「公平なバリューチェーン」「地域コミュニティ」の4つを対象として設定し、「クリーンエネルギー」「持続可能な食料」「循環モデルと材料」を専門投資領域としています。これまでに、30社以上に対し、2.2億ユーロ(約283億円)を投資してきました。

RAISE Impact

Image: RAISE Impact / CFNEWS

RAISE Impactは、将来の世代と地球環境の保護に取り組む起業家を、長期的に支援するフランスの投資ファンドです。投資期間中には、企業の事業開発とインパクト測定のサポートを行います。

最初1億ユーロ(約128.8億円)だったファンドの運用金額は、現在2億ユーロ(約257.5億円)を超えました。注力領域として、「エネルギーの転換」「農業の転換」「循環型経済」「社会的インクルージョン」の4つを定めています。

SET Ventures

Image: SET Ventures / Intralink

SET Venturesは、持続可能なエネルギーシステムへの移行を専門にインパクト投資を行なうVCです。2007年の設立で、オランダのアムステルダムに本社があります。

同社では、知的ソフトウェア・サービスをハードウェアと結びつけて、未来のエネルギーシステムにインパクトを与えるビジネス投資機会をSmart Energy System Solutionと定義しています。投資対象はヨーロッパのアーリーステージのスタートアップで、採択された企業は平均600万ユーロ(約7.7億円)の資金が提供されます。

2020年の投資先企業によるインパクトは、8.8トンのCO2や11.7GWhのエネルギー削減として測定されました。

VNT Management

Image: VNT Management / official website

フィンランドで2002年に設立されたVNT Managementは、3つのプライベートエクイティファンドを運営するファンドマネージャーです。3つのエクイティファンドの運用総額は1.57億ユーロ(約202.1億円)に上ります。

ファンドは、クリーンテクノロジーに特化し、特に、再生可能エネルギー、電気システム、省エネを重視しています。燃料電池システムを開発するConvionや、スマートグリッドの制御システムを提供するDEP Sys SAなどの企業に投資しています。

WCP Impact Dev

Image: WCP / Patrimoine

13億ユーロ(約1673.7億円)の運用資産を持つフランスの投資会社WCP(Weinberg Capital Partners)のインパクト投資部門が、Impact Devです。WCPは2011年に国連のPRI(責任投資原則)に署名するなど責任投資の実践に力を入れてきました。Impact Devでは、特に社会的、環境的にインパクトを与えることを主要課題とし積極的に支援しています。

最近では、2021年10月に、一般向けのデジタルトレーニングサービスを提供するフランス企業WebForce3に3度目の投資を実施しました。

Astanor

Image: Astanor / official website

Astanorは、地球を守りながら、健康的・持続的に世界の人々を支援できる、再生可能でつながりのある農業と食料システムの拡大を目指すインパクト投資機関です。

同社では、肥沃な土壌ときれいな海洋を大切にする「再生」や、食の供給における公平性や透明性を求める「食の健全性」など、6つの原則に沿って投資プロセスを実行しています。また、再生型農業への移行を加速するために、自然と生産者、消費者をつなぎ透明性や品質などを保証する技術革新や、食品の量と質を維持・向上させるイノベーティブな食品加工などを優先事項としています。

Bethnal Green Ventures

Image: Bethnal Green Ventures / F6S

Bethnal Green Venturesは、2010年にイギリスのロンドンで設立されたインパクト投資機関です。測定可能でポジティブな影響を生み出すためにテクノロジーを活用する起業家に資金提供し、社会的・環境的な大問題の解決を目指します。

Bethnal Green Venturesは、9年間で78社に投資を行いました。投資先企業は合計で1690万人のユーザーを持ち、総額で9800万ポンド(約148.3億円)の資金調達に成功しています。また、SDGsの全17目標のうち、15の目標が投資先企業によって網羅され、特に「3. すべての人に健康と福祉を」に取り組む企業は38社と最大でした。

Extantia

Image: Extantia / Solar Impulse Foundation

Extantiaは、ドイツのベルリンに本拠地を持つ、2020年に設立されたベンチャーキャピタルです。気候変動の解決のために、炭素排出量ネットゼロ達成を加速させるテクノロジーイノベーターに投資しています。

評価額10億ドル(約1135.8億円)以上のユニコーン企業であると同時に、CO2排出量を年間1ギガトン削減する企業を、同社は「ギガコーン」と呼び、ギガコーン企業となりえるスタートアップを求めています。

まとめ

特集の第2回となる本記事では、サステナビリティを重視するヨーロッパのベンチャーキャピタルを8社ご紹介しました。

これらのVCの多くは、社会や環境への「インパクト」を投資プロセスの中心にしていますが、インパクトの測定方法や注力領域などは企業によってさまざまです。ESGやインパクト投資は比較的新しい概念ですが、実践しているVCの活動を知ることで理解を深めることができます。

海外スタートアップとの協働や海外進出、サステナビリティに関する事業やレポート作成のご相談などがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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