成功を予測する、スタートアップにおけるトラクションの解説

スタートアップにおけるトラクションとは、顧客数やアクティブユーザー数の増加率など、そのスタートアップやサービスの成長を予期させる進捗や勢いを指します。

本記事では、トラクションがなぜ重要視されるのか、トラクションの指標にはどんな種類があるか、トラクション獲得のためにできることは何かについて解説します。

トラクションとは?

スタートアップにおけるトラクションとは、顧客数やアクティブユーザー数の増加率など、そのスタートアップやサービスの成長を予期させる進捗や勢いを指します。

トラクション(英:traction)を直訳すると、「引っ張る力」や「牽引力」です。ビジネス以外の場面では自動車の用語としても使われ、この場合は地面を蹴る駆動力のことを指します。タイヤが空滑りせずに、エンジンの生むエネルギーを地面に伝え、車体を引っ張る力がトラクションです。

スタートアップにおいて「トラクションがある」と言う時は、その事業に進歩や勢いが見られ、順調に成長する見込みがあることを意味し、逆に「トラクションがない」と言う時は、顧客が掴めず成長の兆しがないことを意味します。

Image: Adobe Stock / Gorodenkoff

トラクションはなぜ重要なのか?

起業家や投資家はトラクションを非常に重要視します。それは、スタートアップの成長にとってトラクションが必要不可欠な要素だからです。

成長

そもそもスタートアップとは、急成長を目指す新興企業です。起業家は創業後にさまざまな決断を迫られますが、常に軸として保持し続けるべき観点が「成長」です。成長とは、ユーザー数や顧客数、売上などの指標の増加率を指します。

トラクションは、成長の証でありその後も成長が続いていく兆しです。トラクションを追うことで、スタートアップは成長を確認することができます。

収益性

また、トラクションは収益性を考える上でも重要な情報になります。現時点では黒字化や収益化がされていないサービスであっても、トラクションがあれば近い将来に収益化が可能か、また、いつから収益化できそうかを判断する材料となります。

資金調達や採用

資金調達や採用においても、スタートアップは自社が有望であることを説得力を持ってアピールする必要があります。多くのスタートアップは十分な知名度も収益性もなく、顧客数も比較的少数です。その場合に説得材料となるのがトラクションです。トラクションがあれば、成長が予測され、自社が投資先や就職先として魅力があることを伝えることができます。

トラクションの種類

トラクションの指標にはいくつかの種類があります。サービスの種類や状況によって注目すべき指標はさまざまです。

収益

最もわかりやすく重要なトラクションは、収益です。利益も重要ですが、収入がなければ支出を増やすこともできません。収益のトラクションがあれば企業はサービスの運営を継続することや、事業の拡大のための採用や投資ができます。すべてのスタートアップが最初から黒字収益があるわけではありませんが、トラクションがあれば将来的な収益予測ができます。

登録者数

収益の次にわかりやすい指標は、登録者数です。対企業向けビジネスか消費者向けビジネスか、有料や無料かによらず、登録者数を確認することでトラクションがわかります。実際に多くのサービスが、ダウンロード数やユーザー数などを自社の成長の証としてフォローしています。

アクティブユーザー数

登録者数に近い指標として、アクティブユーザー数があります。登録だけしてまったくアクセスしないユーザーも多いので、登録者数が収益へつながるとは必ずしも言えません。特に、広告によって収益を得ているSNSのようなサービスでは、実際に広告を見て購買行動を起こす可能性のあるアクティブユーザー数が重要です。

パートナーシップやクライアント数

クライアント数は収益に直結する指標です。登録者とも混同しやすいですが、実際にお金を払うのがクライアントです。SNSで言えば、広告出稿者がクライアントにあたります。

また、パートナーシップも価値ある指標の一つです。業界の大手企業とのパートナーシップや、複数の主要事業主とのパートナーシップなどは、企業の今後の成長を保証する材料になります。

トラクションを獲得する方法

その企業がトラクションを獲得しているのは一時的な偶然なのか、しっかりと計画された結果なのかは、トラクションの獲得方法を確認することで判断できるかもしれません。以下にその方法ををいくつか挙げます。

明確な指標を持つ

企業の成長やトラクションを示す指標は複数存在しますが、その中で何を最も重要な指標とするかが明確であることが必要です。明確でない場合、戦略やチームの方針がぶれてしまいます。

例えば、登録者数を最優先するのか、アクティブユーザー数を最優先するのかでも、企業の方針は変わります。ジムやコワーキングスペースのようなサービスでは、アクティブユーザー数よりも登録者数の方が重要かもしれません。一方で、SNSのような広告型ビジネスではアクティブユーザーを重視すべきと考えられます。

達成可能な数値目標を持つ

重視する指標において大きな目標を設定し、その目標を達成可能な数値目標に細分化することも重要です。例えば、週に5%のユーザー伸び率を目標とした場合、何件のセールスを行なう必要があるのか、新規ユーザーの離脱率を何%に抑える必要があるのかなど、より具体的な数値目標を持つ必要があります。

スケールしないことをする

創業間もないスタートアップの成功の秘訣として、「スケールしないことをする」のも重要です。スケールしないこととは、一人一人の顧客に対するヒアリングやセールス、一般人によるユーザーテスト、創業者自身による徹底したカスタマーサポートなどです。製品自体やサービスの改良に注力することで、よりユーザーに愛される製品の開発が可能になり、初期のユーザーとの関係性も強化されて、その後のトラクションの獲得に繋がります。

まとめ

本記事では、スタートアップにおけるトラクションについて解説しました。トラクションの理解を深めることで、スタートアップの成長の見込みや期待値をより正確に判断できるようになります。

世界各国の多様なスタートアップについて情報を集める際にも、トラクションがあるのか、トラクションを獲得するためにどんな指標を設定しているのかなどを確認することで、その企業をさらに深く理解することができます。

海外進出や海外スタートアップとの協働をお考えの際には、お気軽にご連絡ください。

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