サステナビリティを実現するサステナテック(グリーンテクノロジー)とは?
サステナテック(サステナブル・テクノロジー)とは、環境や生態系に配慮しながら経済・社会の発展を促すテクノロジーや、テクノロジーを使った取り組みの総称です。
再生可能エネルギーから、フードロス削減やリサイクル、森林保護、アグテック、フィンテックまで、テクノロジーや科学を活用して持続可能で公平な社会の実現を目指します。
目次
サステナテックとは?
サステナテック(サステナブル・テクノロジー)とは、環境に優しい製品やサービスを生み出したり、社会的な課題解決に貢献したりするなど、持続可能な世界を作るために活用されるテクノロジーとその取り組みの総称です。グリーンテクノロジーとも呼ばれます。
再生可能エネルギーや省エネに関わるものから、フードロス削減やリサイクル、森林保護、アグテック、フィンテックまで、テクノロジーや科学を活用して持続可能で公平な社会を実現するさまざまな取り組みがサステナテックに含まれます。
近年では、AIや機械学習、ブロックチェーンなどの最新技術の活用も進んできました。それに伴い、加速度的に発展するデジタル化や情報技術をどのように持続可能性に活かすかが、現代における一つの重要な課題として議論されています。
注目される背景
2019年には、国連環境計画の主導で、サステナテック・スタートアップを推進するGreen Technology Startup Hubが開始されました。このプログラムには、IBMやGoogleなどの大手テクノロジー企業も参加しています。
また、その経済規模も注目される一因となっています。Fortune Business InsightのレポートGreen Technology and Sustainability Market, 2021-2028.によると、2020年のサステナテックの市場規模は95.7億ドル(約1.1兆円)ですが、2028年には416.2億ドル(約4.8兆円)に上るとされています。
このような背景から、サステナテックは政治的にも経済的にも多くの関心を集めています。
サステナテックの種類
サステナテックにはさまざまな取り組みがありますが、ここでは主要な分野についていくつか紹介します。
再生可能エネルギー
もっとも中心的なサステナテックの一つが、再生可能エネルギーです。気候変動対策のために、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しない発電方法が求められています。
現在のところ、太陽光発電と風力発電が安価なエネルギー源の選択肢として普及していますが、地域や条件に応じて潮力発電や地熱発電などのさまざまな発電方法が検討されています。
電気自動車、バッテリー
二酸化炭素を排出しない電気自動車(EV)がますます普及している今、個人用の車両に加えて、「電気バス」や「電気トラック」などの輸送手段も開発・提供されています。
また、EVの普及にともなって、バッテリーの市場も拡大しました。代表的なバッテリーであるリチウムイオン電池は、この10年ほどで価格が 約1/5に低下し、EV以外にも電力会社などのエネルギー貯蔵システムとして利用されています。
アグテック
アグテックとは、農業分野の課題をテクノロジーを用いて解決する取り組みを指します。農業は、広大な土地や多量の水の使用、牛をはじめとする家畜の排泄物の処理、農薬の使用など、環境や気候変動に与える影響の大きい分野です。そして、その分テクノロジーを活用する機会が多いともいえます。
例えば、動物肉の代わりに植物性タンパク質や培養肉を製造することで、環境負荷を低減することができます。また、AIを用いた農産物の需要供給予測やサプライチェーンの最適化によって、フードロスの削減にも貢献できます。
リサイクル
環境汚染を防ぎ、資源消費を削減し、エネルギーを節約するために、リサイクルの重要性がこれまで以上に高まっています。ペットボトルなどのプラスチック製品をリサイクルすれば、石油の消費に加え、マイクロプラスチックによる環境汚染と生態系への悪影響を抑えることができます。また、紙と木材のリサイクルは森林保護に、金属のリサイクルは資源採掘の需要の減少につながります。
リサイクルすべき素材や製品に合わせたリサイクル方法や、効率的にリサイクルする方法など、科学とテクノロジーによるイノベーションが求められます。
二酸化炭素回収
二酸化炭素排出量の削減と同等に重要視されるのがその回収技術です。これによって、火力発電所などで発生する二酸化炭素の排出量を大幅に削減したり、大気中から直接二酸化炭素を回収したりすることができるようになります。回収した二酸化炭素は、圧縮して地下深くの安定した地盤に貯留することができ、新しい製品の原料となる可能性もあります。
まだ効果的な回収量は実現できていませんが、イーロン・マスク氏が二酸化炭素回収技術の開発のためのコンテストに1億ドル(約116億円)の資金提供をするなど投資と注目が集まっています。
水素
Hydrogen Councilの2017年のレポートでは、2050年までに4億台以上の自動車、1500万台以上のバス、20%以上のディーゼル機関車に水素が動力源として供給されると予測しています。
水素燃料を用いた自動車は、日本、韓国、アメリカ、ドイツなどですでに販売されています。燃料電池以外にも、水素はエネルギーの長期輸送や貯蔵にも適しており、再生可能エネルギー社会のインフラとなることが期待されています。
サステナテック・スタートアップを紹介
ここでは編集部が特に注目するサステナテック・スタートアップをいくつかご紹介します。
Northvolt(スウェーデン)
Northvoltは、再生可能エネルギー社会への移行を促進するために、環境に優しいリチウムイオン電池を開発する企業です。クリーンエネルギーを利用して二酸化炭素排出量を80%削減することを目標にし、使用済みのバッテリーは回収・分解された後、新しい電池の原材料として使用されます。
創立:2016年
投資額:$3.3B(約3750億円)
出資者:Baillie Gifford
Glowee(フランス)
Gloweeは、人工光の代替として生物発光を利用するバイオテクノロジー企業です。ウミホタルやクラゲなど多くの海洋生物が光を生成・放出しますが、同社では実験室で簡単に培養できる海洋細菌を原料とした製品を開発しています。
人工光の消費を減らしてエネルギー削減につなげたり、生分解可能な発光原料の使用により環境汚染を減らしたりすることが期待されます。
創立:2014年
投資額:不明
出資者:Happy Capital, Maxime Hurtebize
BIO-LUTIONS(ドイツ)
BIO-LUTIONは、プラスチック容器の代替品となるパッケージや使い捨て食器を製造しています。原料は特別な植物ではなく、麦わら、麻、バナナの茎、ブドウの木など、これまで廃棄されていた農業生産の過程で生じる天然自然繊維です。BIO-LUTIONはこれらを同一のプロセスで処理し、製品化します。
同社の製品は、生分解性があり堆肥化も可能なので、環境汚染を防ぎ循環型社会の構築にも貢献します。
創立:2017年
投資額:2000万ユーロ(約26億円)
出資者:KFW DEG
URL:https://www.bio-lutions.com/
まとめ
本記事では、持続可能な社会を作るサステナテック(グリーンテクノロジー)について解説しました。情報技術を中心としたテクノロジーの進化と、気候変動対策や環境保護に関わるニーズを背景に、サステナテックは今後も注目を集めると予想されます。
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