ヘルスケア・スタートアップについて解説します

ヘルスケア・スタートアップは、世界的な感染症の拡大や高齢化に関する課題解決が期待されています。今後、医療関連のサプライチェーンマネジメントや、医療従事者の業務効率化、遠隔医療などの技術活用がさらなる注目を集めると考えられます。

本記事では、ヘルスケア・スタートアップ業界の課題背景や取り組みのトレンドについて解説します。

ヘルスケア・スタートアップとは?

ヘルスケア・スタートアップとは、ヘルスケア産業においてイノベーションを起こす新興企業のことを指します。

ヘルスケア産業は、健康の維持・増進のために行われる行動や健康管理に取り組む産業で、医療設備や市販医薬品から、健康食・サプリメント、スポーツ用品、入浴グッズまで幅広い種類が存在します。

ヘルスケア・スタートアップは、このような多様な領域においてITやデータサイエンスを中心とした先端テクノロジーを活用することで、ヘルスケア産業の課題解決に取り組んでいます。

ヘルスケアが注目される背景

世界のヘルスケア産業は、継続的に成長を続けています。ITを活用したヘルスケア市場に限っても、2019年の世界市場は1,850億ドル(約20.2兆円)で、さらに2026年までには6,620億ドル(約72.4兆円)に拡大すると予測されています。ここでは、このように大きな影響力を持つヘルスケア産業の背景を解説します。

感染症の拡大

世界的な被害をもたらしている新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、衛生や健康に関する意識が向上していると考えられます。特に、ロックダウンや外出自粛の間に、自宅での健康管理をサポートするヘルスケアサービスが成長しました。一方で、外出が必要なヘルスケアサービスの利用数は減少し、全体としては、世界のヘルスケア消費額は2020年に2.7%減少しています。

また、医療現場には多くの資金投入などの支援が行われたため、ワクチン製造を行う企業を筆頭に一部のヘルスケア企業は成長しています。同時に、医療機器や病床の不足、医療従事者の労働環境など医療機関が抱える課題も明らかになり、それらを解決することが求められています。

世界における高齢化

世界では先進諸国を中心に、高齢化が進んでいます。2050年までには世界の60歳以上の人口が全体の22%にあたる約20億人に達すると予測されています。この高齢化現象は、現在の途上国も同様の過程を辿っていくと考えられるので、世界人口に占める高齢者の割合は継続的に増加していきます。そのため、高齢者向けのサービスや保険業、健康寿命を延ばすための健康増進サービスは今後も需要が高まると考えられます。

ヘルスケア・スタートアップの最新トレンド

ヘルスケア・スタートアップには幅広い種類がありますが、感染症の拡大などの時代背景によって、注目を集める取り組みや領域が変わってきます。

ここでは、ヘルスケア業界におけるスタートアップが取り組む課題や領域について、2021年以降注目されているものをいくつかご紹介します。

医療関連のサプライチェーン

従来の病院では、医療関連機器のサプライチェーンが有効に機能していないため、多額の費用負担が発生していると言われています。例えば、米国の病院では毎年257億ドル(約2.8兆円)以上の費用負担があったとする調査があります。そのような状況に加えて、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、緊急時における消毒剤や感染症から身を守るための防護服、人工呼吸器などが入手困難になりました。

これらの課題への取り組みとして、バーコードやRFID(無線タグ)などの技術を活用し、医療機器のサプライチェーンや在庫管理システムの可視化や管理を強化していくと考えられます。

患者に対するケアの最適化

新型コロナウイルス感染症のパンデミック下では、病床数の不足も問題になりました。この課題の解決策として、院内の病床数を増やす以外に、患者の滞在時間を減らすことも効果があります。

今後の病院では、位置情報技術やモバイルコンピュータを活用することで、患者の治療や移動の時間を削減することができます。X線や臨床検査にかかる時間を正確に計測したり、車椅子の準備を容易にしたりすることで、患者が病院で過ごす時間を短縮することができます。

医療従事者の業務効率化

新型コロナウイルス感染症のパンデミックに関連して、医療従事者の心身の疲弊が問題となりました。医療従事者の業務負担を軽減するために、モバイルデバイスなどの技術活用が必要とされています。

例えば、患者に何か異変があった時に、従来のアラーム式でなく担当の看護師のモバイルデバイスに直接通知することで、他の看護師の負担を軽減することができます。また、看護師は同じモバイルデバイスを使って患者のベッドサイドで血圧や心拍数などの情報を直接入力できるため、チャート作成の時間を削減できます。

遠隔医療の普及

パンデミックの影響で、遠隔医療の普及も進んでいます。専門医師がオンラインで患者と対話できるようになったため、医師が診察室や病院間を移動する時間が短縮され、より多くの診療が可能になります。オンラインでの診断は患者にとっても有益であり、院内感染を避け、より早期の医療診断を受けることができます。

まとめ

本記事では、ヘルスケア・スタートアップの概要を解説しました。

新型コロナウイルス感染症の拡大により注目を集めるヘルスケア業界では、世界各国で様々な課題が見出され、解決に向けた取り組みが進んでいます。中でも、病院医療関連のデジタル化は最新の技術活用が求められる領域であるため、スタートアップの成長が期待されます。

ヘルスケア産業において、海外進出や海外スタートアップとの協働をお考えの際には、お気軽にお問い合わせください。

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