エネルギー・スタートアップについて解説します

エネルギー・スタートアップとは、環境・エネルギー産業においてイノベーションを起こす新興企業のことを指します。世界では、気候変動対策として再生可能エネルギーや電気自動車の普及など、大きな変化が起こっています。本記事では、エネルギー・スタートアップが注目される背景や、次世代の環境・エネルギー産業の基盤となる技術について解説します。

エネルギー・スタートアップとは?

エネルギー・スタートアップとは、環境・エネルギー産業においてイノベーションを起こす新興企業のことを指します。

エネルギー資源は、「化石燃料」と「非化石エネルギー」の2つに分けられますが、従来は化石燃料である石油や石炭・天然ガスが主に使用されていました。しかしながら、現在の世界では資源枯渇や地球温暖化の問題に対応するため、再生可能エネルギーや原子力発電などの非化石エネルギーの需要が高まっています。

多くのエネルギー・スタートアップは、この需要に応えるために独自の科学技術を活用し、次世代の環境・エネルギー産業の構築に挑戦しています。

エネルギー産業における大きな変化

エネルギー産業は、資源枯渇や地球温暖化、世界人口の増加などの影響で、大きな変化が求められている分野です。ここでは、エネルギー産業が直面し、今後変化していくと予測される潮流についていくつか解説します。

再生可能エネルギーの普及

2015年に採択されたパリ協定の下、世界では二酸化炭素排出量の削減が行われています。パリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命以前と比較して2度未満に抑えることを目的とし、全ての参加国が自国における温室効果ガス排出量の5年ごとの削減目標を定めています。

この目標を達成するためには、温室効果ガスを排出する化石燃料の使用量を大幅に削減する必要があります。各国の削減目標を踏まえて国際エネルギー機関が2016年に発表した報告書によれば、「低炭素燃料と技術は2040年までにエネルギー需要の増加分の80%を占める」と予測されています。

電気自動車の普及

自動車は温室効果ガスを大量に排出するため、世界の気候変動の主要な原因であると考えられています。そのため、現在の自動車産業では、温室効果のある排気ガスを出さない電気自動車の普及に力が注がれています。

まだ電気自動車は普及の過程にありますが、2030年には新車販売台数の50%以上が電気自動車になると予測されています。また、世界の人口増加と都市化によって、2040年までに自動車数は2倍になると考えられていますが、電気自動車の普及により消費される石油は現在よりも少なくなるとされています。

天然ガスの使用量増加

天然ガスは、石油や石炭と同じ化石燃料の一つですが、他と比べて温室効果ガスの排出が少ない最もクリーンな化石燃料とされています。世界でも、石炭・石油の使用量を削減し再生可能エネルギーへの移行をする上で、天然ガスが重要な役割を果たしています。

また、2000年代後半に、アメリカでシェールガス革命が起こりました。シェールガスは地下深くに閉じ込められた天然ガスですが、技術革新により採掘が可能になり、今後アメリカは世界最大のエネルギー産出国になっていくと考えられます。

電気のない生活を送る人の減少

世界で電気のない生活を送る人々の数は2019年時点で約7億人と言われていましたが、再生可能エネルギーの普及に伴って、その数は減少していくと考えられています。再生可能エネルギーの一つである太陽光発電は、日射量の多い地域に発電設備が設けられるため、赤道近くにある途上国の多くは太陽光発電の最適地となります。

国連が定める持続的な開発目標SDGsでは、2030年までに近代的エネルギーへのアクセスを普遍的なものにすることを目標としています。2030年までに全世界で100%の普及は実現が難しいと考えられていますが、電気のない生活を送る人の数は約6.6億人に減少すると見積もられています。

エネルギー・スタートアップが活用する技術

スタートアップでは、これまで解決できなかった課題を解決するために最先端の技術を活用します。これは、エネルギー業界でも同様です。ここでは、エネルギー業界におけるスタートアップが活用する最新の技術トレンドについて、いくつかご紹介します。

再生可能エネルギー

再生可能エネルギーは、環境・エネルギー産業の持続的変革の中心となります。技術開発も進んでおり、多様な再生可能エネルギーが開発されています。主なものとしては、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスがあり、これに加えて、波力や潮汐力、雪氷などのエネルギー利用があります。

世界で最も再生可能エネルギーを推進している地域はヨーロッパであり、メガソーラーや大規模洋上風力発電への積極的な投資を呼び込みました。

マイクログリッド

マイクログリッドとは、小規模なエネルギーネットワークのことです。従来のエネルギーは、大規模発電所から送電システムを通して広い地域に電力供給がされていました。しかし、再生可能エネルギーを中心とする分散型電源の普及に伴って、各地域でのエネルギー生産と消費を目指すマイクログリッドの考え方が誕生しました。

マイクログリッドでの電力供給システムを成立させるために、発電および消費の電力データ解析や予測、送電の最適化などデータサイエンスの技術が活用されていきます。

ビッグデータ

エネルギー業界では、ビッグデータを収集・解析することでエネルギーの需要供給予測を行います。

ビッグデータ活用が大きな効果を発揮する場面として、再生可能エネルギーの発電量予測があります。再生可能エネルギーは自然由来のため、発電量が天候に左右されるという難点があり、一定量の電力を安定供給することが課題となっています。

そこで、人工衛星や海洋センサーから得られる地上データや気象データなどを活用することで、より正確な発電量の予測が可能になります。

ブロックチェーン

ブロックチェーンは、自律分散型のエネルギーシステムの構築に活用される技術です。従来の発電システムは、大手企業の大規模発電所が利用者に送配電する中央集権型です。これに対して、マイクログリッドのような新しい発電システムは自律分散型になります。

理想的な自律分散型システムには、権力集中や仲介者の必要性がなく、個々人の直接的なやりとりのみが存在します。これを成立させるために、各人の電力供給記録や個人間の精算管理システムの基盤として、ブロックチェーン技術が活用されます。

まとめ

本記事では、エネルギー・スタートアップについて概要を解説しました。エネルギー業界の変革は、日本のみならず、世界においても大きな注目を集めています。特に、気候変動や食糧不足への問題意識の高い欧米諸国において、エネルギー・スタートアップ業界は盛り上がりを見せています。

環境・エネルギー分野で、海外進出や海外スタートアップとの協働をお考えの際には、お気軽にお問い合わせください。

ドイツのスタートアップリスト「Germany Energy 100」

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