スタートアップを育てる、アクセラレーターについて解説します
アクセラレーターとは、スタートアップや新規事業を成長させるためのプログラムです。3か月から半年程度の比較的短期間で数年分の成長を促進する、ビジネス版のブートキャンプといえます。
アクセラレーターに加入すると、資金調達の機会やメンターが得られ、スタートアップのその後の成長に大きな影響を受けます。
目次
アクセラレータープログラムとは
アクセラレーターとは、スタートアップや新規事業を成長させるためのプログラムです。3か月から半年程度の比較的短期間で数年分の成長を促進する、ビジネス版のブートキャンプといえます。
アクセラレーターに加入すると、資金調達の機会やメンターが得られ、スタートアップのその後の成長に大きな影響を受けます。
アクセラレーターで得られるもの
シードファンディング
多くのアクセラレーターではプログラム参加企業にシード投資のオファーを出します。スタートアップは、株式などのエクイティを対価として投資を受けることができます。アクセラレーターは、投資した企業が成長することで運営・投資資金を得ます。
ワークスペース
スタートアップでは作業に没頭する時間が必要なため、集中できる仕事場を提供するアクセラレーターも多いです。コワーキングスペースやプライベートオフィスなど、目的に応じたワークスペースが提供されます。
トレーニング
プログラムでは、さまざまなトレーニング機会を設けています。重要なトレーニングの筆頭が、メンタリング制度です。成功した創業者や投資家、スタートアップを成長させる専門家などがメンターとなります。メンタリングの他にも、セミナーやワークショップ、ピッチの練習などの機会があります。
ネットワーキング
アクセラレータープログラムには、同時に複数のスタートアップが加入し、同期として切磋琢磨します。アイデア交換など同期のイノベーターたちとの交流は、将来的な成功やパートナーシップにつながり、プログラム卒業後に交流を持つことも可能です。また、同期だけでなく、成功した企業の創業者と働くこともあります。
ピッチの機会
プログラム参加企業は、投資家獲得を目的としたピッチを行う機会が得られます。通常はそういう機会を獲得するのも困難ですが、アクセラレーターに参加することで有望な投資家にアピールすることができます。
アクセラレーターの効果
アクセラレーターへの参加がスタートアップの成長に効果的なのか調査した研究では、トップのプログラムなら効果があると示されています。
プログラムの参加有無による比較
アクセラレーター不参加のスタートアップと比較した場合、トッププログラムを卒業したスタートアップは、ベンチャーキャピタルからの資金調達や、買収によるイグジット、顧客のトラクション獲得など、重要なマイルストーンへの到達が速まっていることがわかりました。
しかし、トップ以外のプログラムも含めると到達速度に差はなく、一部のプログラムに至っては遅くなることも明らかになりました。
エンジェル投資グループとの比較
エンジェル投資家のグループから投資を受けたスタートアップと比較した場合、トッププラグラムを卒業すると、次の資金調達までの期間と、買収もしくは失敗までの期間が短くなることがわかりました。
エコシステムへの影響
アクセラレーターの存在が、その都市圏でのスタートアップエコシステムにも影響することがわかっています。それらの都市では投資家が増加し、特にシード期やアーリーステージでの投資が活性化します。
インキュベーションやエンジェル投資との相違点
インキューベーションやエンジェル投資など、アクセラレータープログラムと似た機能を提供する仕組みがあります。ここでは、その相違点を解説します。
インキュベーション
インキュベーションは、事業の創出や起業を支援する活動を指します。アクセラレーターと同様に、資金調達の支援や、ワークスペースの提供、事業相談や交流会などが行われます。
一方で、3か月から半年の短期間であるアクセラレーターと比較すると、インキュベーションは1年から5年程度の比較的長期間のプログラムです。また、アクセラレーターではメンタリングが重要な価値を持ちますが、インキュベーションでは戦略的かつ最小限のメンタリングに限られます。参加の競争率はインキュベーションの方が小さい傾向があります。
エンジェル投資
エンジェル投資も、初期段階のスタートアップを支援する仕組みの一つです。アクセラレーターやインキュベーションはベンチャーキャピタルや大企業が会社として運営する場合が多いですが、エンジェル投資は個人による投資活動です。そのため、決まった採用タイミングやプログラム期間などはなく、随時継続的に投資や支援が行なわれます。
メンタリングは必要に応じて投資家が応えるのが一般的で、ワークスペースの提供なども通常はありません。
世界の有名なアクセラレーター
Y Combinator
Y Combinatorは、カリフォルニア州を拠点とするシードアクセラレーターです。2005年にポール・グレアム氏、ロバート・T・モリス氏らによって設立されました。これまでに3000社以上に投資し、投資先企業の評価額を合計すると3000億ドル(約33.9兆円)を超えます。
卒業企業には、AirBnB、Stripe、Dropboxなどがあります。
Techstars
Techstarsは、コロラド州を拠点とするシードアクセラレーターです。デビッド・コーエン氏、ブラッド・フェルド氏らによって2006年に設立されました。毎年300社が選出され、およそ3か月のプログラムに参加します。これまでに2620社がプログラムを卒業し、投資先企業の時価総額の合計は633億ドル(約7.1兆円)です。
卒業企業には、DataRobot、Outreach、Sendbirdなどがあります。
Founders Factory
Founders Factoryは、ロンドンを拠点とする2015年設立のアクセラレーターです。プログラム期間は半年で、参加企業には3万ポンド(約460万円)の資金が提供されます。パートナー企業には、保険会社のAvivaや、化粧品のL’Oréalなど大企業が名を連ねています。
投資先企業は200社を超え、そのうち45社以上がFounders Factiryのプログラムから誕生しました。
卒業企業には、nate、Perlego、Karakuriなどがあります。
Antler
Antlerは、2017年にシンガポールで設立されたベンチャーキャピタルで、アクセラレータープログラムも運営しています。幅広く世界各国に展開しており、アメリカ、カナダ、イギリス、オランダ、ドイツ、デンマーク、スウェーデン、インド、インドネシア、オーストラリア、ケニアなど、15か国に支社を持ちます。
投資先企業には、Skyqraft、Sampinganなどがあります。
まとめ
本記事では、アクセラレータープログラムについて解説しました。初期のスタートアップにとって、アクセラレーターへの加入を認められることは一つの目標です。有名なプログラムに参加できれば、優秀なメンターなど、よりよい事業開発のサポートが得られ、結果として成功確率が高まります。
海外スタートアップ等を調査する際には、アクセラレーターの卒業生を検索すると優良企業を発見する手がかりになることもあります。
海外スタートアップとの協働や海外進出をお考えの際は、お気軽にお問い合わせください。